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Impromptu 純子の思いつくままに
  <また、やっちゃた・・・>                ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

     2006年4月10日 記

  この2ヶ月あまり、色々なことが続けざまに起きてしまって、すっかりご無沙汰することになりました。ごめんなさい・・・。日本の<桜便り>も、染井吉野から八重桜、山桜へと移行中、と耳にします。いずれにしても華やぎに溢れる美しい季節で、嬉しい限りです。

どうも"忙しい〜〜"と振り回されだすと意識が何処かに飛んでいってしまうようで、ロクなことに遭遇しないみたいです。何をそんなに急いでいたのか、後で考えると呆れるばかりなのですが、ニューヨークのアパートにあるゴミ・シュート(重〜い鋼鉄で出来た蓋の取手を手前に引っ張るとガマの口のようにガバッと開き、手を放すと瞬時にバタッと閉まる、という前時代的なシロモノ)を片手で引き開け、紙切れをポンと投げ入れるつもりだったのだけど、情けないことにシュートの閉まるスピードに自分の行動が付いていかなかったのですねぇ・・・あっと言う間に右手中指先を挟まれて、見るみる間に爪の中が真っ赤に染まり、うわぁ〜、血が滴るぅ・・・と慌てた次の瞬間に爪は真っ黒に変化!

血液中のヘモグロビンが酸素結合して起こす変化のさまを正に目の当たりにしたというわけなのですが、内出血で中指の先っぽが2倍ぐらいに膨れ上がり、ズキン〜と脈打つ痛さったらなかったですよ〜、ホント。氷で冷やしたものの、一晩ほとんど眠れませんでした。そういえばこんな馬鹿げた行動は前にもやっていたな・・・と忌まわしい記憶が蘇ってきたのでした。あの時は右手親指を玄関の扉に挟んでしまい、エ〜ン、親指が失くなっちゃったよ〜、と顔面蒼白になったのですが、前回同様、『天界』からのお力添え!?にて、ヴァイオリンを弾くことに支障が出なかったことは幸運でした。やれやれ・・・

しかし、<二度あることは三度ある>−というのですからね。これ以上のヘマは仕出かせない、と気を引き締めています。急ぐ→慌てる→予期せぬ事故・・・という回路は決まりきっている。だから、"急がない""慌てない"、そして、"急いで"も"慌てない"−ということを自分に言い聞かせることにしました。それにしても指先って目立つんですよねぇ。まっ黒になった爪の回復にはかなりの日数が掛かりそうで、いっそのこと今流行のネール・アートでもほどこそうか、なんてケッコウ真剣に考えちゃったりして・・・でも、ネール・アートで飾り立てたヴァイオリニストなんて、なんとなく嘘っぽくってピンとこないなぁ。

5月17日(水)<心のコンサート>のゲストとして、臨床心理学者/文化庁長官、河合隼雄先生をお迎えするに当たり、少し準備勉強を−と、『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(新潮文庫)というお二人の対談集を再読しています。河合先生に始めてお目にかかったのは、私がこの数年に亘りコンサートをしている、国立情報学研究所主催の『軽井沢土曜懇話会』。リンショウシンリガクシャ・・・なんて難しそうなタイトルから想像すると、どんなムズカシイお顔をした方が現れるかと構えていたら、実に楽しくて、優しくて、ダジャレの専門家みたいな方だったのでビックリ。柔らかな京都弁のお話し振りが実に洒脱で、ご立派な先生のおっしゃることなのだからひと言も漏らすまい・・・と耳をそばだてて聞き入っているのに、実は全部ジョークだった・・・と、先生のペースにすっかり巻き込まれてしまうのです。2月に帰国した際にもお会いしましたが、"この間ネ、NHKに出てフルートを演奏したんですわ。とっても評判が良くてねぇ、オケに入らないか、という話がその後あってね・・・""あら、素晴らしいですね、先生"と私。"ほう〜、それはどこのオケです?と聞いたンですわ。そしたら、「カンオケ」(棺おけ)や、って言われてねぇ。イヤ〜、それはちょっと未だ勘弁してくれ言うたんですわ〜"・・・なんて調子。河合節−この5月のコンサート、楽しみにしててくださいね、皆様。

<国立情報学研究所 軽井沢土曜懇話会、国際高等セミナーハウス(軽井沢)にて>

さて、1995年に行われたという村上・河合お二人の対談は10年以上経った今でも、人間、そして日本社会が抱える数多くの問題提起となっていて、とっても面白い(ということは、人類あまり進歩していない・・・とも言えるのかな?)。アメリカに滞在していらした体験をお持ちのお二人が日米文化の相違などについて述べられているご意見は、私にとってはかなり興味深く、共鳴するところが多いのです。 村上春樹さんは、日本にいらした時には、とにかく<個人>になりたい、色々な社会とかグループとか団体とか規則とか、そういうものから逃げて逃げまくりたいと考えて、文壇にも属さず、ただひとりで小説を書いていらしたそう。アメリカに三年ちょっと滞在された、その最初のころから逆に、自分の社会的責任感みたいなものをもっと考えたいと思うようになられた。アメリカに行って住んでみたら、そこはもともと個人として生きていかなくちゃならない国(文化)なのだから、もう逃げ出す必要なんかない。社会から離れて<個人になりたい>なんていう願望は、何ら意味を持たなくなった・・・と、社会や団体からの「デタッチメント」(分離)と、逆の「コミットメント」(関わり)について、ご自身の中で起きた意識の変化を語っておられるのですが、それは正に私がアメリカという国に長年住んで、その間に私の意識の中で起きた<変化>そのものなんですね。アメリカにいると常に"自分とは誰か・何か"という意識を持っていないとやっていけないし、自分が属している「社会」との関わり方について(知らずとも)常に考え、向き合って生きている、と言えるかもしれません。自分は「社会」に対して一体何を、どんな形で提供できるのだろう、なんてことは日本では<口幅ったい>もの言いになってしまうけれど、アメリカでは「個人」にとっての結構大きな人生の課題(ちょっと大げさかな?)となっているのでは、という気がする・・・ま、人にも依りますけれど、ね。

河合先生が日本人のあり方をとても面白く分析されていて、"日本のこの頃の学校教育というのは、個人を大切にしようとか個性を伸ばそうとか、教室によく大書してある。(河合先生が)「こんなこと、アメリカではどこにも書いていない」って言うと、みんなビックリして、「アメリカでは個性は大切なんじゃないですか」と言われるが、いや、そういうのは当たり前の話だからわざわざ書く必要は無い−と答えるんです。日本では「個性を大切にしましょう」と校長先生が言ったら、「ハァー」というわけで、「みんなで一緒に個性を伸ばそう」となり、知らない間に<みんな一体>になってしまう。そのぐらい日本では「個人」ということがわかりにくい・・・"と。

日本では「社会的運動」(ボランティアその他)に関わる(コミット)すると、みんなベタベタになって、個人の自由を許さなくなる。ベタベタと付き合うのが立派なやつで、自分のアイディアで何かしようとするやつは異端の烙印を押される。ボランティアなど、欧米では個人としてコミットするから、来る時は来る、来ない時はこないというようにできるけれど、日本では週に3回参加できる人は1回しか参加できない人よりいばる、ということも出てくる・・・なんてお話も出てきますが、社会に対する自分の意思表示や、社会的運動は下手にできないね、というのが一般の日本人の本音かもしれませんね。どうも、日本人は集団を組むと個人をないがしろにする傾向があるようで、だから集団から離れて、独り(個人)になりたい−という願望がつのってくるのかもしれません。社会の動きに無関心−という人々が多いのも無理ないことかも・・・とも思うけど、それじゃ日本はますます"東洋の離島"みたいになっちゃうんじゃないかなぁ、と心配です。

村上春樹さんと河合先生の対談集から刺激を受けて、ちょっと長話になってしまいました。長話をたまに掲載するより、もう少し頻繁に<Impromptu>を書いていかなくちゃ、即興曲−という"軽妙さ"がなくなっちゃいますね、反省・・・。ではまた。


エッセイ集
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寒中お見舞い申し上げます
2005/12/16:
このごろの日本って・・・
2005/10/01:
12月2日(金)のコンサート
2005/09/08:
やれやれ
2005/07/24:
ん十肩?
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もう、なんと腹立たしい・・・!!
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アメリカ便り#2
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