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Impromptu 純子の思いつくままに
  <〜アメリカ便り〜その2>
<メリー・クリスマス or ハッピー・ホリディズ?>
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2004年12月24日 記

  は〜い、みなさん、お元気ですか?

今日はクリスマス・イヴなのですが、こちらアメリカでは、<メリー・クリスマス!>と<ハッピー・ホリディズ!>のどちらの方が、『Politically Correct』(政治的に正しい)であるか、という一大騒動がクリスチャンと非クリスチャンの間におきています。TVやら新聞を巻き込んで喧々ごうごう・・・。どうも11月の大統領選以来、Red States とBlue Statesの色分け=ブッシュ現大統領に投票した保守・共和党支持の州と、民主党ケリー候補を支持したリベラル色の強い州を、それぞれ赤とブルーに塗り分けたアメリカ地図を覚えておられますか?

太平洋・大西洋に面した東西両海岸部、そして真ん中にひとつだけポツンと一点のブルー(シカゴのあるイリノイ州)・・・あとは真っ赤、まるでスイカでも割ったみたいでした=が残した Trauma(心の傷)は未だ癒えることなく、何かにつけ真っ二つに見解が割れ、いがみ合いが多くなったように思えます。まぁ、もともと「白か黒」か「Yes か No」かのお国柄ではありますが、ね。

ことの始まりは、公立学校の授業でクリスマス・キャロルを子供たち全員が歌うという伝統や、公共の広場にクリス マス・ツリーを飾り、町・村・市長やら州知事やらが公人として点灯式に出席して祝うという慣習なのですが、ユダ ヤ人や他宗教の人たちの多い地区(恐らく、ニューヨーク州とか、お隣のニュージャージー州あたりが震源地でしょ うね)で、それは非クリスチャンへの"宗教の押し付け"なのではないのかというクレームが出たのです。その攻撃に ひるんだ?役人たちが、キャロルは学校では歌わせない、クリスマス・カードを非クリスチャンの友達に送ることは 避ける、クリスマス・ツリーを"ホリデー・ツリー"と呼ぶ・・・といった馬鹿げた公約をしたそうな。そうしたら今 度はクリスチャンが黙っていない。クリスマスをクリスマスとして祝えないなんてことは神聖な儀式を冒涜するもの で、憲法で保護された「宗教・思想の自由」を侵害していると−いった強い突き上げが起きたわけなのですね。そう なると、宗教学者だとか評論家が ここぞとばかりにしゃしゃり出て・・・。

クリスチャンでない人たちにとって、クリスマスというのは一体何なんだ? という疑問が当然湧いてきますが、あまりあちこちに目くじら立てても世の中、トゲだらけで傷なしに生きるのも大変です。いろんな考えを持った人たちがいて、それぞれの感性を尊重し、受け入れながら、折り合いできる所を探す・・・といった具合に、どうして人々は生きられないのでしょうね。ニューヨーク・タイムズ紙に、"お互い、も少し力を抜いたら?"という論説が載っていましたが、このところのアメリカはゴチゴチ硬派の台頭で、すごく風通しが悪くなっています。

彼らは自分達の信じるところ(価値観−とでもいうのかなぁ)を押し通すためには、真実を隠すことなど何とも思っていないのです。イラク戦争だって、実際に現地に行って状況を見てきた上院議員や記者たちは"治安や、アメリカ軍の置かれている情勢はどんどん悪くなっている。これは出口の無い戦いだ"と言っているのにも拘らず、ブッシュ政権は"アメリカ軍は大きな成果を上げている。治安はより安定している"といった調子。TVなどのメディアも保守色が強まり、都合の悪いニュースは発表されないか、表に出てもいつの間にか闇に葬られてしまう・・・ニューヨーク・タイムズ紙のような、リベラル紙はハナから無視(読まない)、というのがブッシュ政権の姿勢なのですから、まったくやってられないよなぁ・・・という思いばかり募りますね。

今日、クリスマス・イヴ・ディナーというのに出掛けたのだけれど、中部(セントルイス)出身のカップルと同席して、ちょっと面白い会話をしました。彼らはいわゆるアメリカのエスタブリッシュメント階層の人たちで、教養があって、マナーもいいし、人柄もとても良く、フレンドリー。しかし自ら"私たちは大変な保守よ。Red State の人間よ。この間の選挙は最高だったわ"と言ってはばからないのですね。久し振りにニューヨークに来て、友人たちに会い、"貴方たちニューヨーカーと私たちは全く考え方が異なる。しかも考え方だけじゃなくて、食べるものだって異なる"という話になったのだそうです。

"中部・南部の人間はニューヨーカーみたいにSushi(これはすっかり英語になりました。低カロリーで身体に良い、とリベラル派には大流行!)なんか食べない・・・もっとヘビー(フライなどの油の強い料理法が多いんですねぇ。何故なんだろう??? 野菜なんか色が変わるまで煮ちゃうし、フライは油ベトベトだったり、素材のジュースが出切ってしまうまで揚げちゃったり・・・中西部や南部を演奏旅行したとき、食べるものにホント、苦労しましたよ〜)な食事を好むし、ね"と言うので、ヘビー・フードと政治のつながりは? と聞きましたら、"私たちは、信心深く、モラルを大切にし、家族を大切にし(東部のリベラル派はゲイ同士の結婚を認めたり、どんどん離婚したり、無宗教だったり・・・まったく節操が無い?)、伝統をしっかりと守っていく(もしかすると、Sushiみたいな新参ゲテモノは、幾ら流行ったって食べない、ってことなのかな?)"という、よく分からない返事が返ってきましたが、まさに、この種の人々がブッシュ政権の言うところの『健全で、強いアメリカ』を支えているのですね。クリスマスの伝統は彼らによってシッカリ守り継がれていくことでしょう。誠実でね、とってもいい人たちなのですよ・・・だから本当に困るのだ・・・。


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