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Impromptu 純子の思いつくままに
  <ロシア音楽に魅せられて> ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

2010年4月14日 記

  もう10年ちょっと前になりますが、ロシア極東の地、ウラジオストクとハバロフスク、そしてモスクワを経てチェコ・プラハへ、と国際交流基金による巡回公演をいたしました。

当時のロシアは、モスクワなどの大都市では一部の成金資本家たちが台頭し始め、でも一般市民の生活は本当に苦しくて、自給自足による食料確保を余儀なくされていました。
ハバロフスクで会った国立劇場オーケストラ楽団員たちも例外でなく、給料の支給が滞る中、アルバイトを重ねながら、楽器のメンテナンスに掛かる費用をやりくりするのが本当に大変・・・と嘆いていましたっけ。そんな苦境にあっても、ロシアの人たちの<芸術>に向ける情熱はひたむきで、毎週末に催される「詩の朗読会」には大勢の市民が参加。また、演奏会があると聞けば1ローフのパンを泣く泣く諦めてチケットを購入する・・・といった話も耳にしました。国際交流基金主催の演奏会や催しは、開催地の市民に無料で公開されていたと思いますから、消極的なスタンスしか示さないことの多い日本政府にしては、かなり“上出来”の貢献・・・と感心したものです(笑)。

何はともあれ、ロシア人の血に流れる熱い<芸術性>は一体どこから来るのだろう・・・と常々不思議に思っていましたが、在ウラジオストク日本総領事館の方から伺った話から何か感得できた気がするのです。貴族出身の革命家であり、ソビエト社会主義共和国連邦の建国者、ウラジーミル・レーニンは、この極東の地の開発に着手した時、まず最初に何を手掛けたのか? それは工場でも研究所でも道路でもなく、劇場だったそうです。
優れた<芸術>花開く土地には、強要しなくても才能溢れる学者や人材が自然と集まる・・・そう判断したレーニンの、芸術に向ける認識の高さは<文化人>そのものですね。「芸術」とは矢張り、民族に根を深く下ろした<伝統文化>なのではないのかな?−そんな思いがします。

毎回のことながら、このコンサート実現のために温かいお力添えを頂いた実行委員の皆様、コンサートの現場を支えて下さっているスタッフの方々、そしてご来場の皆々様に心より御礼申し上げます。また、今回もレセプションのために、小田原・鈴廣さん、そして、
甲府・ワインズ新富屋さんより、お心こもるご協力を賜りましたことに深く感謝申し上げます。


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