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Impromptu 純子の思いつくままに
  『新年のごあいさつ』 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

2010年1月21日 記

  すっかりご挨拶が遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。
お健やかに良いお年をお迎えになりましたでしょうか?
新年早々フロリダ州ウェスト・パーム・ビーチでコンサートがあり、そのプロモーションとしてのFMラジオ番組出演やプログラム曲目解説文執筆などの準備に暮から追われておりました。理由は様々にしても年がら年中“ご無沙汰”が生じてしまうので、限りなくお恥ずかしく、大変申し訳ありませ〜ん!今年こそ“地道にコツコツと”(テヘヘ・・・)をモットーに頑張ります!! 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

今月12日に起きた<ハイチ大地震>ですが、この20日にはマグニチュード6.1の最大余震が起きたとのニュース。国全体が崩壊してしまうのではないか・・・と案ずるほどの被害で、犠牲者の数も膨大です。被害者の中には孤児となってしまった沢山の子供たちが含まれていることも心痛の至りです。フランスからの独立後、政権を牛耳った独裁者たちが私腹を肥やすことに専念し、“ないがしろ”にされてきたインフラの不備が被害を一層大きくしたとの報道でしたが、こういった大災害が起きると、貧しい国が更に貧困の度を増す・・・まるでDeath Spiral を辿っていくようで辛いですね。
世界中の人々のお心ある協力で一日も早い復興が可能となりますように!

今回のフロリダ・コンサートは、Norton Museum of Art で開催されていた ≪William Kentridge(ウィリアム・ケントリッジ/南アフリカ出身のアーティスト):Five Themes≫ という特別作品展と連結したものでした。タイム誌が“世界で最も影響力ある100人”の一人に彼を選出し、また、“2009年アメリカで開催されたトップ10展覧会の中で第2番目に優れたもの”(同マガジン)− と位置づけたこの作品展は、現在アメリカ国内を巡回中(サンフランシスコ、ウェスト・パーム・ビーチ、ニューヨークなど)で、その後は世界各地での公開が予定されているそうです。

この作品展に適したコンサート・プログラムを考えて欲しい、と美術館の担当者から依頼を受け、演奏曲目選定へのインスピレーションを得るために作品展をジックリと鑑賞しました。Norton Museum 主催の演奏会に招かれるのは今回で二度目。有難いことに、同美術館で開催が予定されている展覧会に関連付けたプログラム企画を、私自身の采配でその都度行わせて頂けるのです。責任も大きいですが、下調べや、アイディアを練ったり・・・の過程がワクワクと楽しく、こういった機会を頂けるのは本当に幸運ですね。


美術館のパンフレット:一番上の男性二人が写っているのはケントリッジ作品のanimatedフィルムのひとコマ。男性は双方ともケントリッジ本人です。

美術館のカレンダーに掲載された私のコンサート情報

 

  クリックすると原寸でご覧になられます

ケントリッジの作品群(自らコンテなどで描いた素描を使って制作された短編フィルム、インスタレーション、写真、彫刻など)には、南アフリカのアパルトヘイトのほか、植民地政策、独裁政治、また、人間の内面に潜む<二面性>などに向けた辛辣なパンチが内蔵されています。<弾圧政治>においては力を振るう為政者たちのエゴと残虐性が露わになるのが常ですが、こういった人間の非情・冷酷さに対し、彼はペーソスに満ちた“笑い”を武器にシニカルな闘いを挑んでいます。「残酷」とは“不憫”に値することなのだ、とでもいうかのように・・・。だから作品に添える音楽は限りなく美しく可笑しく哀しく・・・それが却って人間の“歪み”を拡大して見せるのですね。こういったアプローチはショスタコーヴィッチの作品に相通じるかもしれません。
(この作品展の)強烈なインパクトは私にとって息苦しいほどで、鑑賞後すぐには会場から立ち去ることが出来ませんでした。

ケントリッジは音楽にも造詣深く、ブリュッセルのオペラ・カンパニーのためにモーツァルト:『魔笛』の舞台装置・衣装などを担当。また今年の3月にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場の新プロダクション、ショスタコーヴィッチ:『鼻』の舞台装置を手掛けることになっています。それらの一部も公開されていました。ケントリッジの作品展 − 皆さんも機会があったら是非にご覧くださいね。色々と考えさせられること“大”ですよ。

演奏会に先駆け、プロモーションのために地元パブリック放送局のFMラジオ番組:『Classical Variations』に出演しました。ジョアナ・マリー という、とても快活で魅力的な女性がホステスです。月曜から木曜までの4日間、ゲストたちへのインタヴューの合間にCDを流し、コンピューターを駆使しながら昼12時から3時の時間帯を彼女一人で切り盛り(笑い)するのです。そのお手並みは見事!
今回私は、Norton Museum教育プログラムのキューレーター、グレン・トムリンソン氏と一緒に出演。約1時間の出演時間を活用し、演奏会のこと、演奏曲目の解説、美術館で行われている様々な活動や特別・常設展覧会についてなど、幅広い話題に話が弾みました。前もってコンサート資料は提出しているものの、まったく打ち合わせなしでポンポンと番組を運んでいくジョアナさんの、見事なギアの切り替えと機転には舌を巻く思いでした。


ジョアナさん

グレンさん

グレンさんと私

今冬は世界的に寒さ厳しいようですが、普段暖かいはずのフロリダ州でもクリスマスあたりから寒気に見舞われ、北部の都市では気温が氷点下まで下がるなど、“寒冷”記録が更新されています。コンサート当日の1月10日早朝は気温が2,3度しかなく、昼間に太陽が出てやっとひと心地つくような気候でした(因みに冬場の南フロリダの平均気温は、朝11,2度、昼間は22、3度ぐらいでしょうか・・・)。しかし、寒気が訪れると、それは〜〜見事な晴天となります。空気は澄み切り、乾燥度は限りなく高く、湿度は30%台にまで降下し、ヴァイオリンのために加湿器が欲しかったぐらい。何せここは海が目前にあるのですから、普通なら湿度から楽器を守るための心配をしなくちゃならないのですけれどねぇ・・・。
パーム・ビーチより大西洋を臨む

コンサート前の1週間ほどは、私の“ヴァイオリン姫”のゴキゲン定まらず、彼女に随分と振り回されてしまいました。でもお陰さまで演奏会当日には“姫”のゴキゲン麗しく、心地よい音色を奏でてくれましたのでホッと一息。この寒さじゃお客様たちの出足も鈍るのでは(だって、寒気を避けるために南フロリダまでやって来ているのだもの)・・・と覚悟をしていたのですが、有難いことに超満員 <立見席Only>と相成り、会場のエントランス・ホールにまで急遽予備席を設けるなどの対応が必要となりました。遥々(交通事情にもよりますが、車で1時間半ぐらい掛かるかな?)マイアミから日本国総領事もご出席くださいましたし、また実際にラジオ放送を聴いてコンサートに駆けつけて下さったお客様も何人かいらして、“感謝感激”の思いでおります。本当に有難うございました。:−)

演奏中の私とピアニストの Tao Lin 氏

ご無沙汰している間に書きたいことが山ほど溜まっちゃいました。少しずつ小出し(笑い)にしていきますね。では又・・・どうぞお元気で!


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