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Impromptu 純子の思いつくままに
  ≪年の終わりに・・・≫               ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

     2006年12月31日 記

  あらら、ついに2006年もあと僅か・・・。日本の皆様は煤払いも終え、新年を前に心静かなひと時をお過ごしなのではないかと拝察申し上げます。 今年は終盤に向けて、かなりの追い込み状態が続き、すっかりご無沙汰してしまいました。ご報告出来ないままに随分と色々なことがありました。思いつくままに認めてみたいと思います。年末年始のおくつろぎの傍らにでもご一読くださいませ。

あっ、そうそう、青森の皆様、12月31日16:30からの30分間、『大津純子の音楽彩々』(12月6日にホテル青森で開催されたコンサートの実録)が青森テレビ局にて放映されまぁ〜す!このエッセー間に合うかなぁ・・・ダメかなぁ・・・是非にご覧下さいね。大三元さんの<ハイカラ・じょんがら>も大好評でした。

と、ここまで書いていたら、CNNの"Breaking News":イラク元大統領、サダム・フセインの絞首刑執行−というのが飛び込んできて、なんとも複雑な気分になってしまいました。彼の35年間にも及んだ恐怖政治がどれだけの犠牲者を生んだかは今更述べるまでもないけれど、でも、アメリカが強引に仕掛けた戦争による犠牲者の数はイラク国民、そしてアメリカ軍双方において膨らむ一方で、今や制御する術も、解決への糸口も掴めない大混乱状態・・・。この2,3ヶ月、やっとアメリカ国内に"イラク戦争は間違いであった"という声が公になるようになったけれど、先が全く見えない混沌とした現状にとって、「フセイン処刑」という出来事が一体どれだけの意味を持つのか、しかも何故、今? − という思いに囚われるのです。

こういった疑問を投げ掛ける人々は数多いようで、CNNのインタビューに対しイラクの国連大使は、"そのように批判する人々はフセイン政権下のイラクで生活したことがない人たちに違いない・・・体験していたならば、「フセイン処刑」がイラクの将来にとってどれだけ輝かしい一歩を刻んだ史実であるかが分かるはずだ。勿論、現在の、この混沌から国を建て直すことは容易なことではない。しかし、ここにおいてイラク国民は過去に決別し、「自由意志」(free will)をもって生きる<道>を開いていくことになるのだ・・・"と応えていました。フ〜ム・・・

先日、フロリダ州東南部ウェスト・パーム・ビーチの少し北に位置するジュピター・アイランドにあるソーシャル・クラブでヴァージニア州選出の上院議員(Senator)、John Warner氏の講演会が企画され、その講演前に演奏をして欲しい − という依頼を受けました。ワーナー上院議員は共和党内の有力者であり、"言うべきことはハッキリ物申す"姿勢に有権者からの人気も高いとのこと。昔々に短期間ではあったけれど女優、エリザベス・テーラーの"旦那さんの一人だった"そうですが(これは余計な情報かしら?)、彼の講演:『Around the World in Sixty Minutes』に興味もわき、二つ返事で引き受けたわけです。

ジュピターは大西洋と内海に挟まれた、フロリダらしい自然=温暖な気候、やしの木、きれいな砂浜、そして美しい日の出と夕日などなど=を満喫できる細長い島(もっともこういった島はフロリダのここかしこに存在するけれど)で、その中でも特に選別されたHobe Soundと名付けられた地区には、僅か500軒しか住宅が建てられていないとのこと。各家の区画は1〜2エーカー半(1acre=4046.86u)が標準だそうですから、実にゆったりとした静かな佇まいなのです。住人の大半は、恐らく先祖代々からこの土地に避寒を目的にヴァケーション・ハウスを建てている北部のWASP(White Anglo-Saxon Protestant:英国系の白人新教徒)の人たちなのだろうと思われますが、アメリカのエスタブリッシュメント層にはWASPが多く、この層がアメリカ国内の富の1/10を所有しているのではないか、とも言われています。

経済的な豊かさは質の高い教育、あらゆる意味での"一級品"に触れながら育つ、という恵まれた生活を可能にするけれど、近頃台頭してきている、"浮ついた"新興成金に比べるとWASPのエスタブリッシュメント層に属する人々は、社会に対する関心や責任感が強く、宗教心も強く、礼儀正しく、文化的で、品格のある人たちが多いと感じます(少しベタ褒めかしらん?)。アメリカには歴史はない − とよく言われますけれど、彼らにはヨーロッパから流れる歴史をシッカリと背負っている、といった<風格>があり、彼らの物腰のひとつひとつにGeneration の積み重ねを感じるのは私だけではないと思います。彼らの存在はアメリカの<底力>そのものとも言えるんじゃないかな。

よく使われる英語表現:"You can almost hear a pin drop"(まるで細いピンが落ちるのが聞こえるほど静か・・・)− がピッタリするぐらい、聴衆の皆さんは私の演奏に聴き入って下さり、それは〜〜嬉しい思いがしましたが、演奏後にワーナー上院議員の講演を聞いたことで彼の"良きことは学ぶべき"というバランス感覚と健全な人格を知り、ブッシュ政権の不誠実さには嫌気がさしていたけれど、世界全体を冷静に見ることができる彼のような人材が頑張っていてくれるなら、アメリカも絶望的ではないですね − とちょっぴり嬉しくなりました。決して侮れないですよ、この国は。

さて、11月22日には<心のコンサート>第3回目を盛会のうちに終えることが出来ました。ご参加くださいました皆様、本当に有難うございました。このコンサートはお陰様で、回を重ねる毎に成長させて頂いております。次回は来年の5月25日(金)です。ゲストはイラストレーターの柳原良平さん。そして、その日は私の新しいCDの発売日にも当たります。この1月末にそのCDのためのレコーディングが始まります。楽しみにしていてくださいね。

先日、11月コンサートのゲストとして参加して頂いた作家の篠田節子さんからメールを頂いたのですが、なんと彼女、コンサートあとの打ち上げ(出演者や主催関係者の慰労会)が終わってから、チェロにお花に(懇親会でダイエーさんから提供いただいた、とっても美味しかった)餃子に靴にドレス・・・という大荷物を抱えられての帰宅途中、新宿駅前で降りられたそうなのですが、工事用フェンスの暗がりで、アスファルトが盛り上げてあることに気づかずに転倒され、楽器をかばったことで手を使えず、顎を強打して、しばらく人前に出られない顔になってしまわれたとのこと。膝もズボンの上からすりむいて・・・でも楽器は無事でした、と。

それは〜大変な事態が起きていたのですね。夜遅く、お疲れだったこともあったのでしょう。餃子なんかお持ち帰り頂いて益々荷物が膨れ上がり、申し訳ないことをしてしまった、と心からお見舞いを申し上げました。それにしてもすごく痛かったでしょうねぇ・・・と、自分ごとのように思えてなりません。演奏家の方にはお分かりになると思うけれど、楽器を持っているときに何かコトが起きると、楽器をかばうことに気を奪われて我が身にとんでもない災難が襲い掛かることがよくあるんですよね。

実は私はかなりのオッチョコチョイだったりしまして(これまでのエッセーを読まれた方には想像がつくかも?)、時折とんでもないヘマをやらかします。最近はあまり無理をしなくなった(年の功?)せいか被害は少なくなりましたが、少し前まではよく転んだり、障害物に衝突したり(歩いていて・・・です。何にも見てないんですねぇ・・・)で、切り傷、擦り傷、打撲アザ・・・などキリ無くて、ですから、そういった怪我の痛さがよ〜く分かります。あ〜ぁ、本当に痛くて〜〜〜大変でいらしたことでしょう。涙涙・・・。でも、骨折もなく、大事に至らず、本当に良かったです。私の場合も、大悲劇の一歩手前で何とか治まって、命拾いをしています。ご加護ですね。

楽器を持っていると無意識に楽器をかばってしまうのですよね。まだ芸大生の頃、雨で濡れた駅の階段で滑り、楽器をかばいながら見事に一番上から踊り場まで転落。気付いたら頭と足の位置が逆さになっていて、しかも当時はミニスカート全盛時代でしたから、その醜態たるや想像できるでしょう? 若い男性が"大丈夫でしたか?"と一応は声を掛けてくれましたが、必死になって笑いを堪えているのがミエミエでした。痛くて死にそうでしたがグッと歯を喰いしばって、あたかも何事も無かったような顔をして早々にその場を立ち去りました。もちろんヴァイオリンは無事でした・・・でも暫くは打撲内出血、擦り傷などで苦しみましたねぇ、うっ、うっ、涙・・・

皆様にとって2007年が、怪我も無く、健康で、素晴らしい発展性のある一年となりますように! 新年もどうぞよろしくお願い申し上げまぁ〜す。


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