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Impromptu 純子の思いつくままに
  ≪気になることばかり続いて・・・≫               ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

     2006年9月19日 記

  *8月17日、河合隼雄先生が脳梗塞で倒れられ、意識不明で肺炎も併発されているというニュースに驚き、折をみては文化庁の秘書の方にご容態を伺っていましたが、未だ意識が戻られないまま・・・でも肺炎は治まってきている、とのお話ではありました。それから既に一ヶ月が過ぎましたが、症状が好転しているとのお知らせはありません。
5月17日の<心のコンサート>にご出演くださった時の先生は本当にお元気で、まだまだこれから人生を大いに楽しむぞ、というオーラに満ち溢れておられました。私にはよく分からないことですが、高松塚に関する問題では相当ご苦労されていらしたのではないでしょうか。コンサート当日、文化庁からの緊急の迎えに演奏後の予定を急遽変更され、懇親会にも打ち上げにもご出席されず、慌しくお帰りになられたのはこの問題のためだったように思います。これはオフレコではあるのですが、壁画カビ発生問題について先生は、"ず〜っと眠っていたものを掘り起こして空気に曝したら、カビが生えたり色彩が薄れたりして当たり前ですわ。掘り起こす前にそのことをキチンと説明して置くべきだったのに、それを怠ったのが一番の失態です。しかも、事が起きてからカバーアップしようとするから問題がどんどん大きくなってしまう・・・"と、個人のご意見として話されていました。考古学の専門家たちが集まっているのでしょうに、もう少しまともな対処ができなかったものか、とつくづく思ってしまいますね。
いずれにしても、1日も早く先生が意識を回復され、いつもの河合スマイルでジョークをポンポン発するお姿に接することができますように! お祈りさせて頂いている毎日です。

*9月5日にニューヨークに帰還しましたが、ちょうどUS Openテニス大会開催中。私は、派手なパフォーマンスをせず、グッと感情を抑えながら黙々と見事なショット(その美しさたるや芸術の域ですね)を放つスイス選手・フェデラーが大のお気に入りなので、番組を録画しては結構一生懸命観戦してしまいました。こういったスポーツ試合を見ていていつも思うのだけれど、何千、いや何万もの観衆を陶酔の渦中に巻き込んでしまう、あのエネルギーの旋風ってすごい・・・ちょっと怖ろしい連想になってしまうけれど、ローマ時代のコロシアムにおける奴隷たちの<死闘>・・・生きるか死ぬかの狭間で闘う姿に観衆は本能的に反応するのかなぁ。近今とみにクラシック音楽業界の衰退が取り沙汰されているけれど、聴衆をゾクゾクさせてしまうような"何か"− が演奏の場に常に発散されていたなら、少しは将来に希望が持てるのかしらん。もちろんクラシック音楽がもたらす「感動」は、ロック音楽やスポーツ試合の「興奮」とは全く異なるものだけれど、"素晴らしかった、面白かった・・・又行ってみたい"− と聴衆が感じる場を、演奏家自らが身を挺して提供することを忘れてはいけないな、と強く感じることしきりです。

さて、US Openの話に戻りますが、ずっと不調だったアメリカ・テニス界から今回、アンディ・ロディック選手 が男子シングルス決勝に残ったことで、観衆・TVコメンテーターたちの盛り上がりようたるや大変なものでした。そして、男女シングルス決勝試合後のトロフィ・プレゼンテーションがこれまた凄かった・・・。ジャズ・シンガーたちが<Beautiful America>を歌い、その間にテニスコート一杯に大きな星条旗が衛兵たちによって広げられ・・・と、アメリカ愛国色に満ち満ち溢れた一大式典だったのですが、こういった「自らを自らで褒め称え」的イベントは何やらむず痒い思いがして私はどうも苦手。 9・11テロ(早くも5年の歳月が流れました)で多くの人々が亡くなり、負傷し、そのえぐられるような傷口は未だ癒えることがありませんし、二度とこんな無差別テロが起きてはならないけれど、現政権の下で叫ばれる"We,America" "強くて、美しい国・アメリカ"風潮には、何とはなしに末恐ろしい不安を感じてしまいます。

一方、最後までスポーツマン・シップに則って闘い終わった選手たちの姿は実に清々しく、勝者・敗者がお互いの実力を讃え合う潔さは見る者の心を柔らかくしてくれます。負ければそりゃ悔しいでしょうし、自分に運が巡ってこなかったことに対する恨み・つらみもあるとは思うけれど、それを克服する強さが人間にはあるはず。それなのにどうしてこの長所を育てることが出来ないのか。単にスポーツはスポーツでしかない、と言われてしまったらそれまでですが、お互いをののしり合い、残虐な殺戮と報復しか考えない、権力に溺れる人々が何か学んでくれたら・・・な〜んて、実に甘いよね〜。

*今、アメリカでは<ホウレン草>が大問題になっています。ホウレン草は健康に良いから、ポパイはあんなに強い・・・なんてフレーズに反応する人たちは"年代もの"かもしれないけれど、健康志向、有機野菜ブームに乗って、洗浄済みホウレン草パックは大売れでした。日本ではどの野菜もきれいに洗浄されていて、ホウレン草なんかちょっと洗えば赤い根っこの部分まで食べられるし、またこの根っこが美味しいんですよねぇ。新鮮なものはとっても甘いし・・・。アメリカに来て、そんなつもりでホウレン草を買ったら、いくら洗っても洗ってもジャリジャリとした砂が取れない。仕方ないので、根っこは切り落として食べざるを得なくって、今ひとつ面白くないんです。葉っぱや茎もかなり注意深く洗わないと砂ジャリジャリが口の中に残る・・・というわけで、準備にひと手間かかるホウレン草クンはいつしか買い物リストの隅に追いやられることが多くなっていたのですが、この洗浄済みパックは実に便利でして、なにしろ柔らかい葉っぱ部分しか入ってないから、そのまま調理に使えるし、レストランなんか封を切ってそのままサラダに使う、なんていう手抜きをしてましたね。これはちょっとイヤだったけど。

それが突如「E.Coli 」(イー・コーラィ・・・とTVでは発音してましたが)というバクテリアに冒されたカルフォニア産の有機栽培・洗浄済みホウレン草パックによる被害がアウトブレイク。すでに1人が死亡し、18人が腎臓を冒され、300人以上の人々が病院に駆け込んでいるとのニュース。確か先日までニューヨーク州では被害報告はなかったはずだけれど、昨日ついに被害者州リストに加わったようで、次から次へとアメリカ全土に問題が広がっている模様です。一時期大騒ぎになった、日本の<かいわれ大根騒動>を思い出します。

本日のNY タイムス紙記事によると、1995年からすでにレタスとホウレン草に関わる食中毒は起こっており、19種の食中毒のうちの8種がカリフォルニア州Salinas Valley で育てられていたもので、2人が死亡、400人以上が病気になったのだとか。2005年11月にF. D. A.(Food and Drug Administration)が"より一層の注意を払わなくてはならない"という報告を出していたそうですが、なんともはや効果ある対策が取られていなかったようです。Salinas では洪水による被害が繰り返し起きており、川や入り江の水がE Coli に冒されていることは分かっていた、との話ですが、そんな土地で有機栽培なんかしちゃったら大問題になることぐらい想像がつきそうなものですがねぇ。しかし、今回のアウトブレイクに関しては、バクテリアの発生原因がまだ解明されておらず、調査結果が出るには一週間か、それ以上掛かるだろうとのこと。そんな実情で、スーパーマーケットの野菜売り場を大きく占領していたホウレン草パックは全て撤去され、また、調査結果が出るまではパックされていないホウレン草も一切口にしないように・・・と警告が出ている事態です。

この頃の世の中はどんどん便利に(というか"手抜き"が可能に)なり、楽して元取ろう− みたいな流れが席捲していますが、自らの苦労を他人様に委ねてしまった分だけ、やっぱり後の"お返し"が怖いですね。でもね、あのホウレン草ゴシゴシ・・・は結構、大変でしたよねぇ。この頃の日本みたいに"この野菜は私が作りました"−なんて、製造業者さんの名前・顔写真付きのプロダクトをアメリカで売り出したら大受けすると思いますよ。「保証します」ということは絶対的な自信の裏返しだし、それはつまり「何かあったら責任を取ります」という宣言なのですね。潔く生きる−ということは責任感の伴うことで、自らの努力を徹底的にしなくてはならない。エネルギーの要ることだけど、達成できた時の充実感もひとしおでしょう。試合終了後のフェデラー選手の笑顔とダブってくる・・・ウフッ、私もガンバロッと。


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