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Impromptu 純子の思いつくままに
  ≪光陰矢の如し・・・≫               ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

     2006年7月22日 記

  ハイ、又もや気付くと7月も終盤です。ご無沙汰しておりますが、皆様にはお変わりありませんか? このところのアメリカは、山火事、熱波、ハリケーンによる大雨・大風、雷の多発・・・と様々な自然災害に見舞われているし、更にレバノンのヒズボラとイスラエルの戦争が激化する中、TVニュースは連日の溢れるような情報量に慌しさを増しています。

何年か前、≪復活祭≫の、ちょうどその日にエルサレムを訪れる機会があったのですが、住宅地のあまりに美しい街並みには目を見張るばかりでした。真っ青に広がる空、緑の木々、よく手入れされた家々の真っ白な壁、そして飾り窓やベランダの色鮮やかな花々はプランターからこぼれんばかりに咲き乱れ、爽やかな高原地帯の空気(エルサレムは高地なのですね)と相俟って、スイスかドイツの何処かの町にでも迷い込んだような錯覚をおぼえたほどでした。もちろん当時だってパレスティナ人との領地を廻る血に塗られた争いは混迷の最中でしたが、エルサレムに居る限り、そんな事実を忘れてしまうような長閑さ、豊かさだったのです。ところが一歩、パレスティナ人居住区に出てみると、其処は不毛の地。土茶けた傾斜地に張られたボロボロのテントの周りには泥まみれの家畜たちが数頭、心もとなげに佇み、草木などほとんど見当たらない、乾き切った"貧しさ"が強く印象に残っています。

イスラエル人たちは"自分たちは莫大なお金や労力を投入して、緑と水を手に入れることを可能にした"と言うでしょう。しかし、≪エルサレム≫は元来、生命(緑)が育つために必要な自然条件に適った美しい土地なのだ、と強く感じました。だからこそ≪聖地≫なのですね。『百聞は一見にしかず』といいますが、あの土地の持つ<豊潤な生命力>を目にしたことで、私は初めて彼らの紀元前からの確執の実態が理解できた・・・と言えます。美しい≪聖地≫は、どちらも絶対に手放すわけにはいかないのです。イスラエル人たちの苦渋の歴史に同情(という言い方はオコガマシイ限りですが・・・)をおぼえていた私ですけれど、あの"違い"を見てしまってから、すっかり心情が逆転してしまいました。持てる者はあくまでも強く、持たざる者は服従の道しかない−そんな論理は余りに空しく、厳しく、辛く私の心に突き刺さります。彼らはお互いが滅亡するまできっと戦い続けるのでしょうね・・・。

さて、この27日からコペンハーゲンに出掛けます。北欧は、ノルウェイの一部は訪れたことがあるけれど、デンマークは全く初めてなので、ワクワクしています。そもそもは私がこのところハマッテいる、北欧の作曲家たちの音楽との出会いがキッカケなのですが、ちょっと前までアメリカのTVで流れていた電気髭剃り器コマーシャルに、"The product was so good, so I bought the company!"(あまりに素晴らしい製品だったから、会社ごと買っちゃった!)なんて社長自ら出演していたのがあったけれど、"Scandinavian music is so beautiful and interesting, so I decided to make recordings!"(北欧の音楽はあまりに魅力に溢れているからCD作っちゃう!)−っていうわけで、デンマークに留学していた私の大学時代の友人ピアニストと一緒に、色んなリサーチを兼ねた『音楽の旅』なのです。

デンマーク音楽の父的存在のニールス・ガーデ(1817〜90)の音楽は、時折どんどん迷路に入り込むような不思議な感覚があるのだけれど、私の友人ピアニストによると、"北欧で1世紀から17世紀に掛けて使われていたという<ルーン文字>=*注 古代ゲルマン族の文字で、ギリシャ文字から変形・発達。直線と点を主体とした音素文字で24種から成る(三省堂「大辞林 第二版」より)=が伝える、彼らの歴史や中世のバラッド(バラード)詩の中にワーグナーの『神々の黄昏』などのオペラの題材が見出せるし、聖なる龍が自分のしっぽを飲み込んでいるレリーフは、北欧音楽の混沌としたフレーズそのままみたい・・・"ということなのです。デンマークにはルーン文字の刻まれている石があるそうなので、是非に見てこようと思っていますが、奥深い「迷路」に取り込まれてしまわないよう、要注意かもしれないな・・・。

CDには、どんな音楽作品を取り上げるのかって? それは"お・た・の・し・み・・・"! 来年5月発売を目指していますので、その節にはヨロシク!!

・・・というわけで、パスポート更新が必要になって、先日、NY総領事館に申請に出掛けたのですね。以前は日本から戸籍謄本だか抄本だかを取り寄せなくちゃならなくて、ひどく面倒だったのですが、今は現時点で所持しているパスポートにある情報:本籍地モロモロ・・・が変更になっていなければ、そういった書類は必要ないとのことでホッとしました。私のパスポートは10年有効のものだったので、訪れた色んな国々のヴィザやら入出国スタンプやらで、ほぼ白紙ページが残されていないような状態でしたから、時期的にも切り替えの潮時だったのですね。しかし・・・すご〜いショックでした。いや〜、新しい写真が必要でしょ? それなりにお化粧にも気を配ったつもりでパスポート用写真を撮りに行ったのですが、出来上がりを見て、え〜っ!! 10年の歳月−というのはあっと言う間に過ぎてしまうようだけれど、実はとっても恐ろしいものなのですねぇ・・・。まぁ、大体が、「即時プリント」のパスポート用写真というのは"2度と直視したくない"シロモノが多いけれど、ですね。私ってホント、この10年間随分色々と苦労を重ねてきたんだなぁ・・・と、思わず我が身を労わりたくなってしまったのダ。

そんな話を知人にしたら、彼女(アイルランド女性で、すごくおっとりとした、いい人)が、"そうなのよ。昔は、こんな写真、醜く写っていて最悪!って思ってたのに、それを最近見ると、へぇ〜、悪くないじゃない。結構いい線いってたんだ・・・なんて思うのよ。まったくイヤになっちゃう・・・"と。うん、うん、私の10年前に撮ったパスポートの写真だって今見直すと、すっごく可愛いンだから! もし2016年まで健在でいたとして、再びパスポート更新をすることになったら、同じことを思うのかなぁ・・・グスッ・・・


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